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『印象管理士が紡ぐ、人と企業の輝く未来』

一般社団法人日本印象管理士協会

代表理事

竹田浩一郎

愛知県名古屋市に本社を置く株式会社C.I。代表取締役の竹田浩一郎は、企業の従業員の印象管理を通じて、日本の企業文化そのものを変革しようとしている。「従業員一人ひとりの印象が、企業の印象を作る」という信念のもと、独自の理論で多くの企業を虜にしている竹田に、その原体験から現在に至るまでの道のりと、これからのビジョンについて聞いた。

「幼少期の容姿へのコンプレックスも、今の仕事につながっている」

竹田「小学校の頃は、いつもニコニコしていて、友達に困ることはありませんでした。でも気を遣うタイプで、喧嘩していないのに『こういうこと言っちゃったな』と気になって寝れなくなることもありました。」

幼い頃を照れくさそうに振り返る竹田。父の転勤で、出身である静岡から浜松へ小学4年で引っ越し。もともとはお笑いキャラだったが、環境の変化もあって自意識が高まったという。

竹田「小学5年で天然パーマが嫌になり、天然パーマコンプレックスになりました。小学校ではジェルが使えなかったので、濡らしてから学校に行ったりしていましたね。中学ではニキビがひどくなり、今でも顔や髪を人に触られるのは苦手です。」

自己肯定感があまり高くなかったこともあってか、竹田は早いうちから服装や髪型などの外見に対する意識が高まっていった。小2から始めたサッカーでは、ジャージやスパイクのデザインにもこだわっていた。そんな学生生活に転機が訪れたのは、大学に進んでからのようだ。

竹田「大学に入ってサッカーは少しやってやめました。高校までは嫌いだった音楽にハマり、特にブラックミュージックにはまりました。クラブでラップなどをしたり、友達とイベントを組んで集客するなど、この頃の経験は今のスキルの素地になっているかもしれません。」

自分たちの手で何かを生み出すやりがいや楽しさを味わった竹田だったが、就職にはあまり関心がなく、たった一社だけ受けた住宅系の企業に受かったら、すぐさまそこに就職することを決めたという。

「1年目で県内のトップセールスになっちゃって」

竹田「入社して1ヶ月で、取れないはずの契約が取れてしまいました。営業ができることに気づいて楽しかったです。1年目から、県内のトップセールスでした。」

他の同僚が1日100件電話をかけても達成できない目標を、竹田は1日5~6本のテレアポで達成してしまったという。一体なぜ、そんな成果が挙げられたのだろうか。

竹田「1年目で6件、2年目は1年で11件、1億円案件を取りました。競合がテレアポをかけていないところを見つけるのが上手かったんです。」

天性の才能を発揮し、2年目で全国1000人中6位の営業成績を達成。2年目で主任、3年目で課長へと異例の昇進を果たす。しかし、管理職になると自分の壁にぶち当たることになる。

竹田「プレーヤーは得意でしたが、部下をマネジメントする方法がわかりませんでした。成績が上がらないと怒って、自分がやってしまう。まったく意味がありませんでしたね。」

転勤で職場が変わってもやり方を変えることができず、ついには降格。結婚で生活環境が変わることもあって、職を変える選択をする。

竹田「求人にマンションアドバイザーと書いてあって。条件も良さそうだったので転職したのですが、分譲マンションの管理会社でした。賞与と歩合を勘違いしていて、全然給料上がらないなと。」

次に選んだ仕事は、求人の内容を勘違いしていて、歩合ではなくほぼ固定給だった。自分の力で収入を上げたいと思って知恵を絞り、外壁の修繕やエレベーターの保安点検などの受注活動を強化し、100人の営業の中で2人しかいないインストラクターに最短で抜擢されるも、そこはやはり会社の制度なので、大きく収入を増えることはない。

竹田「仕事に将来性を感じられず、どうしようかと思っていたときに、前職の上司から声がかかりました。『一緒に何かやろうか』と誘われ、名古屋、富士宮、静岡で事業をスタートさせました。」

創業メンバーとして加わった会社では、住宅を買う人にアドバイザーがいないことに着目。FPなどの資格を取って、分譲住宅に営業に回り、住宅購入者などに買い方のアドバイスを出すコンサルティングの営業を行った。

竹田「20軒まわると3人とは話ができたので、確率は悪くないなと。2011年にゼロ金利政策が始まったこともあって、住宅購入に関するアドバイスや、ローンや家計に関する資産計画のアドバイスが刺さりました。分譲マンションの管理会社にセミナーを開催してもらって、個別相談や契約につなげました。」

順調に軌道に乗り始めた事業だったが、創業メンバー内でも意見の齟齬が生まれ始めるなど、方向性に迷いを感じていた。同じ頃、知り合いの紹介で参加した異業種交流組織で、今の事業に至るヒントを見つけた。

竹田「その組織に入会したら、やたら服のことを聞いてくる人がいて、LINEでやりとりするうちに少し楽しくなってきました。自分のファッション好きが、なんだか人の役に立つんだなと。」

それまでは営業成績や数字のことばかり考え得ていたという竹田がそんな風に思えたのは、自分の仕事の意義を考えるようになった頃だったかもしれない。

竹田「FPをやっていて日本の経済がヤバいことがわかり、若者が日本に未来を感じていないと気づきました。しかも若者はYouTuberには憧れるのに、社内には憧れの人がいないというのをどこかでみて、このままじゃまずいなと。」

そんな思いもあってか、自分の中で「かっこいい大人を増やすための活動」をやってみようと、ぼんやりと始めたのが「大人が通う服装の学校『OTOGAKU(おとがく)』」だった。

「印象管理で人の社会を明るくする=会社を明るくする」

竹田「2021年にファッション好きの仲間を集め、法人も含めた幅広い人たちにファッションのアドバイスを提供するサービスを立ち上げました、個人向けのスタイリストは多いけど、法人向けはいないので、やってみたら面白いのではないかと。このサービスには今も200名を超えるメンバーが参加しています。」

かくいう筆者も、「法人向けのファッションコンサルティング」というサービス概要を初めて聞いたとき、そんなニーズがあるんだろうかと思った。しかし、時代の流れは竹田の直感を追いかけるように変化していった。

竹田「明確なサービスの形はわからない中で、企業向けに身だしなみの研修などをやり始めました。すると意外なニーズが見えてきました。企業の中で服装の自由化というのが進む一方で、ビジネスファッションの定義がわからなくて混乱が起きていました。」

2010年ごろからクールビズが始まると、ビジネスファッションのカジュアル化は年々浸透していった。さらにコロナ禍で在宅ワークなどが普及したり、ダイバーシティの重要性が認知されるなどの社会的な変化もあって、ビジネスファッションはさらに自由化が進んだ。一方で、過剰にカジュアルな服装で出勤する人が増えるなど、企業の人事部門を中心に大きな問題意識が生まれていた。

竹田「そんなときに僕たちが伝えていたのは『ビジネスの場ではオシャレは必要ないけど、好印象を与える身だしなみのリテラシーは必要だ』ということ。企業の人事・総務部門がそのメッセージに反応しました。企業引き合いが増えてきた時に、自分たちは何者なのかを考え始めたんです。」

2023年2月に、OTOGAKUメンバーの中から「印象管理士」という言葉が出てきた。自社の社員が社内・社外に与える「印象」を「管理」する「専門家」という意味だ。おりしも人手不足社会の到来を見据え、企業は「インナーブランディング(社内向けブランディング)」などを議論し始めていた。

竹田「今私たちは、1社に1人、印象管理士が顧問として設置される社会を目指しています。そのためには、その効果を企業担当者にしっかりと説明できないといけない。そのための数値化の仕組みの開発や、民間資格の構築などに力を入れています。」

服装について質問してくるたった1人の知人の反応をヒントに、企業内の服装の乱れという課題に辿り着き、その解決策をサービスとして作り上げようと立ち上げたのが「一般社団法人日本印象管理士協会」だ。

「従業員をコストとして捉える考えをシフトさせたい」

竹田「企業はメディアブランディングは投資だと考えるのに、従業員の研修への投資はコストだと考えている。でも印象管理士は人を通じたブランディングであり、コストではなく投資だと捉えてほしい。」

人手不足は慢性化し、当然AIやロボットの活用が今後増えていくのは間違いない。そんな中で、人間にしかできない付加価値の創造は一層求められる。その一つとして、「顧客により良い印象を与える」人材を育てられれば、業績へのポジティブな影響は大きいだろう。

竹田「人的資本経営という言葉が最近注目されていますが、人を通じたブランディングは、外資は普通にやっていることなんです。日本企業も、従業員に対する考え方をシフトしていく必要があります。」

人的資本経営とは、人材を資本として捉えて、その価値を最大化することで企業価値を高めようという考え方だ。印象管理を通じて、従業員の魅力を高めることは、どんな影響があるのだろうか?

竹田「社員の魅力が増せば、外部に対しては自社の印象アップや売上アップなどが期待できます。しかしそれだけではなく、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。一緒に働く人が魅力的な職場の方が、離職率なども下がると思いませんか?」

従業員一人一人の魅力が増すことのメリットはとても多いだろう。しかし、「魅力的な社員」とは一体どんなイメージなのか。

竹田「印象管理サービスの資料には、ファッションやおしゃれという言葉は使っていません。「自分に関係ない」と思う人が出てきてしまうからです。なぜ”印象”管理かというと、自己実現ではなく相手のためだからです。従業員同士の印象が良くなることで、社内コミュニケーションも良くなります。」

たかが印象、されど印象。従業員の印象がよくなることで、業績だけでなく社内のエンゲージメントまでよくなると見通すのは、幼少期に自分の容姿を気にしたり、周囲の反応をずっと気にしていた竹田の実体験から生まれるインサイトなのかもしれない。

「ザ・普通の自分がどこまでいけるのか試したい」

竹田「OTOGAKUを始める際に、12人に声をかけましたが、今まで残ってくれたのは半分でした。マネジメントが上手くできず、売上を上げられなかったのは自分の責任です。2024年は勝負の年だと思っているので、売上を立てるつもりです。」

悔しさを滲ませながら、決意を語る竹田の心には、起業家にしては珍しい自己認識と挑戦意欲がある。

竹田「僕自身は、ドラマティックな原体験とかはなく、趣味もない。勉強は得意ではないし、両親も経営者じゃない。ザ・普通の人間です。そんな人間がゼロイチでどこまでいけるかを試したいと思っています。」

その想いはきっと、かつて抱いた「かっこいい大人がいないから、若者が希望を持てないんだ。かっこいい大人を増やさなければ。」という危機感にもにた使命感からだろう。「ザ・普通の自分でもここまでできるんだ」というのを、自己顕示欲ではなく、若い世代へのエールとして実現したいのだ。

竹田「多くの人の協力があってこそ、今の自分がある。この恩を何かの形で返していくのが、私の人生かもしれません」

飾らない物腰、穏やかな口調、そして熱い想いを秘めた眼差し。竹田の人柄に引き込まれるのを感じた。「ザ・普通」を自認する氏だが、周囲への感謝の念を忘れず、素直な心を持ち続ける姿勢こそが、並々ならぬ強さの源泉なのかもしれない。

日本の企業文化を変革する。もちろんそれは困難な挑戦だろう。だが、決して不可能ではないはずだ。名古屋から始まった小さな一歩が、いつの日か日本を動かす大きなうねりとなる日が来ることを、心待ちにしたい。

竹田浩一郎 1982年生まれ、静岡県出身。

株式会社C.I 代表取締役

一般社団法人日本印象管理士協会 代表理事

一般社団法人日本印象管理士協会

HP:https://impression-jima.co.jp

撮影協力:納屋橋TWILO

HP:https://nayabashi-gakubuchi.jp/publics/index/25/

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